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米国知財事情 |
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米国における企業と大学の知財活動
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1 イントロダクション 2002年における企業別米国特許取得件数に関する上位239社が発表された。国際的知財活動における中核をなす米国特許の取得リストを分析すると、世界の企業の知財における活動状況の移り変わりが鮮明に見えてくる。 日本企業を全般的に概観すれば、上位239社中65社(27%)を占める。本国米国の115社(48%)と合わせれば、日米2ヶ国で75%と圧倒的である。逆に、他の諸外国をすべて合計しても25%にすぎない。 特に、上位10社で見れば、6社を日本の電子関連企業が占めており、技術競争力の維持に貢献しているものと解される。権利の取得件数から見る限り日本企業の活動状況は、高く評価すべきであろう。 今回のリストを国別で見る限り、過去5年間に大きな動きは見られない。だが、企業別、業種別に分析すると、注目すべき変遷をうかがうことができる。日本企業の将来の知財活動にとって有効なヒントが隠されているように思われる。具体的に考察してみよう。
2 米国先端企業 まず注目されるのは、IBMである。プロ・パテント政策が定着した1990年代初頭以来、IBMの知財活動は積極的な拡大を続け、米国特許取得件数における第一位の座を譲らない。今回公開された件数は、何と3,333件である。第二位のキャノンの1,895件と比較すれば、その圧倒的な優位性は明白であろう。 IBMが知財の拡大戦略を長期的にとり続ける理由は三つあるように思われる。 第一に、知財による直接収益である。1990年当時、約30億円と見られた知財関連収入は、2002年には、約1500億円まで増大したものと推定される。利益率が極めて高い知財の売り上げとしての1500億円は、ハード製品の売り上げに換算すれば、3兆円を超える売り上げに相当する。 第二に、技術情報を入手するための手段としての知財活動である。IBMは、基本的に自社特許を公開し、適正な料率でライセンスを他社に供与する。ただしライセンス契約に際しては、相手方からの技術情報の供与を条件とする。このため、IBMの特許の恩恵を受ける代償として、世界中の企業の技術情報が常にIBMに流れ込む。だから、IBMは常に世界の情報の中心に位置することが可能となる。 第三に、デファクト・スタンダードを構築するための手段としての知財活動である。動きの激しいハイテク技術の業界において、長期的に頂点を維持するためには、デファクト・スタンダードを構築し、維持する戦略が最も確実である。抜群の技術開発力に強力なパテント・ポートフォリオがかみ合ったとき、その企業の技術は、デファクト・スタンダードとなって、長期的に業界をリードすることが可能となる。 次いで注目すべきは、マイクロソフト社である。同社は、ソフトウエアを主力商品とする企業の性格上、著作権を中心とし、特許についてはあまり積極的でないことで知られていた。ところが、2000年代に入ると戦略を一変し、特許活動に積極的に取り組み始めた。その成果として、今回一挙に34位(499件)に登場した。また今秋、同社は特許を原則として公開、安価な料率でライセンスを供与する方針を明らかにした。 マイクロソフト社が採用を表明した知財戦略は、明らかにIBM戦略の踏襲である。特に、情報の収集、そしてデファクト・スタンダードの構築によって同社商品の長期的安定化を指向するものと推測される。同社は現在、パソコン用のソフトに限らず、自動車関連製品のコンピュータ化に取り組んでおり、ソフトとハードを組み合わせた商品群のデファクト・スタンダード化に力を入れているように思われる。自動車のコンピュータ化が一段落した後に来るのは、住宅のコンピュータ化と推察される。同社の知財戦略は、今後特許を中心にさらに強化されるものと思われる。 知財活動に積極的なIBM、マイクロソフト社と対照的に、少々遅れが気になるのは、アップル・コンピュータ社である。233位(76件)とIBMとの落差が甚だしい。独特の技術力で評価される企業としては、長期的な知財戦略に少々懸念を抱かざるをえない。
3 大学の知財活動 日本では大学による知財活動の活性化が話題を呼んでいる。そのモデルとなっているのは、米国の大学である。彼らの活動状況を検討してみよう。 まず、上位239社中に名を連ねているのは次の6大学である。カリフォルニア州立大学(第37位:466件)、マサチューセッツ工科大学(MIT:第116位:152件)、カリフォルニア工科大学(CalTech:第156位:117件)、スタンフォード大学(第162位:110件)、テキサス州立大学(第167位:104件)、ジョンホプキンス大学(第180位:95件)である。 これらの中で特に注目されるのは、6大学中3大学がカリフォルニア州に集中している事実である。ここでも理由は、三つあるように思われる。 第一に、産学協力体制に適した立地条件である。シリコン・バレーを先導するスタンフォード大学が上位に位置するのは当然ながら、カリフォルニア工科大学はロサンゼルス市の近郊パサデナ市にあって、カリフォルニア中部地区の電子・コンピュータ周辺機器関連企業と密接する。カリフォルニア州立大学の中では、サンフランシスコ市の近郊バークレー市にあるバークレー校(UCB)は、シリコン・バレーを含むカリフォルニア北部企業との連携、ロサンゼルス校(UCLA)は、カリフォルニア工科大学とロス地区で競い合い、サンディエゴ校(UCSD)は、サンディエゴ近郊で急成長するバイオ産業と密接な関係を保っている。青色発光ダイオードの研究で知られる中村修二教授の在籍するカリフォルニア州立大学サンタバーバラ校(UCSB)は、サンフランシスコとロサンゼルスを結ぶ地区の企業と多く連携する。 第二に、企業と大学の間の人材の流動性である。米国の大学教授職は、常に企業の高級研究職との交流の可能性に恵まれている。現に相互の交流は至極活発である。このため、大学に居ながら企業の求める技術の方向性を正確に掌握することが可能である。つまり大学と企業間における研究テーマに関するずれが少ない。だから大学の取得する特許発明は、企業の欲する技術に直結する確立が高い。その結果、事業化の確率の高い特許に的を絞って所得することが可能となる。人材交流は、産学間に限られない。行政・司法を含め、官民の間の交流は常に活発である。 第三に、企業から大学に対する研究委託制度の充実である。米国の大学における教授職は、一種の事業部制をとる。つまり、教授は半ば独立した研究組織の代表として諸企業と交渉の上、委託研究を受任する。だから大学教授といえども、ビジネス感覚を磨くことが求められる。教授間の競争も激しい。負担は厳しいが、この競争に鍛えられた教授達の事業能力は、企業経営者に見劣りしない。当然ながら、特許を初めとする知的財産権に対する見識も半端ではない。
4 まとめ 日本企業の国際的知財活動を米国における特許取得数で見る限りにおいて、量的には申し分の無いレベルに達したものと思われる。技術の質的に見ても、近年の充実ぶりは高く評価すべきであろう。特に電子、通信、自動車関連技術においては、世界のトップレベルにあることは間違いあるまい。さらに、特許を取得するための出願実務に関する日本企業の能力も格段に向上した。 それにもかかわらず、日本企業の特許収支は、米国企業に大きく遅れをとる。原因は、個々の特許取得や権利行使活動を超えた長期的な知財戦略に関する知識・経験の不足にあるように思われる。どうすれば、知財を真の企業財産として最大限に活用することができるのだろうか。 最も確実なヒントになるのは、先導するIBMとマイクロソフト社の指向する長期的な知財活用戦略であろう。もう一つ、それは大学との連携作業の改善である。これまで十分に活用されていなかった日本の大学組織の中には、埋もれたままの金の卵が隠されているように思われる。 完
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